一日は、朝の「おはようございます」というあいさつで始まり、夜の「おつかれ
さまです」や「さようなら」で終わります。みなさんは、一日に何回あいさつを交
わしているでしょうか?ご近所の方、保育園の先生や保護者、職場の人や
お客さまなど、あいさつは日々の暮らしに欠かせないものだと思います。
何気なく交わしているあいさつでも、その返答から「今日は元気がないな」と
相手の様子に気づくことがありますし、逆に明るく元気なあいさつを受けること
で、少しぎくしゃくしていた関係がふと和らいだり、会話のきっかけになったりもし
ます。あいさつは、私たちの日常において、実に便利で柔らかなコミュニケーシ
ョンツールなのです。
ところで、みなさんは見知らぬ人にもあいさつをしますか?また、どこまでの
範囲であいさつをするべきか、迷ったことはありませんか?子どもたちには、あい
さつの習慣を小さいうちから身につけてほしいと思う一方で、防犯の観点から
「知らない人とは話さないように」と教えるべきなのか、悩ましいところです。もし、子どもが見知らぬ人とあいさつを交わしたことで、思わぬ事件に巻き込まれて
しまったら……そう考えると、軽々しくは言えません。
また逆に、大人が子どもにあいさつをしただけで、不審者と誤解されて逃げ
られたり、防犯ベルを鳴らされたりという話を聞くと、なんともやるせない気持ち
になります。そんな世の中になってしまったのかと、思わずため息が出てしまい
ます。
そもそも「あいさつ(挨拶)」という言葉の語源は、禅宗の「一挨一拶」に
由来します。挨には「心を開く」、拶には「心に近づく」という意味があり、禅寺
では師が修行僧に問答を通して修行の深さを見極めることを「一挨一拶」と
呼んだそうです。
朝の第一声「おはようございます」で、その日が少しでも晴れやかに、気持
ちよく始められるなら、あいさつほど簡単で効果的な方法はありません。地域
や状況によって、あいさつを交わす相手の範囲は異なると思いますが、その場
に応じて大人が手本を示すことは、子どもにとって大切な学びになります。他
者との関わりや物事の善し悪しを判断する力を育むうえでも、あいさつは欠か
せない礼儀であり、社会性を育てる大切なコミュニケーションの一つなのです。
あいさつは、子どもたちが社会とつながる最初の一歩。大人の姿を通して、
心のこもったひとことの大切さを、日々の中で伝えていけたらと思います。
