最近、子どもを叱ったことはありますか?子どもが嘘をついたとき、危険な行為をしたとき、または他人を傷つけるような場面では、叱ることがあるでしょう。しかし、「叱る」という行為にはネガティブなイメージが強く、できることなら避けたいと考えてしまうかもしれません。叱ることで子どもから嫌われたくない、子どもを泣かせたり悲しませたりしたくない――そうした感情から、叱るのをためらう場面もあるでしょう。
では、「叱る」という行為の出発点はどこにあるのでしょうか?叱る側、つまり多くは大人が、その子どもの行動やその背景にある考え方に対して反対する気持ちを抱いたとき、「叱る」という行為が生じるのだと思います。ただし、叱る側が思い通りにならないことへの憤りや苛立ちをぶつけてしまうと、本来子どものための行為である「叱る」ことが、大きく逸れて「怒り」となってしまいます。「叱る」という行為は叱る側の感情と密接に関わっているため、自らの感情をコントロールすることが重要です。「叱る」とは、子どもを大切に思う気持ち、すなわち「愛情」を土台とする行為です。だからこそ、叱る側には目的を見失わず、冷静でいることが求められます。
ところで、「叱る」という漢字は「口」に「七」と書きます。これは、叱る側が何度も繰り返し「やってはいけないこと」を説き、子どもが自ら善悪を判断して行動する力を身につけることに通じるものではないでしょうか。叱られた子どもは、「できなかった自分」「悪いことをした自分」と向き合わなければなりません。悔しさや悲しみから涙が出ることもあるでしょうし、感情の行き場を失うこともあります。そのため、なるべく早く気持ちを切り替えられるような配慮も必要です。繰り返される「叱り」の中で、子どもはなぜ叱られたのか、どのような行動が叱られるのかを自ら考え、判断する力を育んでいきます。その際、大切なのは「じっくり長時間叱る」のではなく、「何度も繰り返し、あっさりと叱る」ことです。
叱ることで行動が改善されるのは、叱りの意図が子どもに伝わり、子どもが反省した証です。「自分を顧みて、自分を変える」ことの難しさは、大人のほうがよく知っているでしょう。それを成し遂げた子どもを大いに褒めて認めること――それもまた、叱りの一連の流れとして重要です。
「叱る」ことは決して簡単なことではありません。しかし、人が成長していくうえで、なくてはならないものでもあります。大人になって、子どもの頃によく叱ってくれた人のことを思い出すとすれば、それはその「叱り」の根底に、紛れもなく「愛情」があったからではないでしょうか。
参考書籍:新任1年目の子どもが信頼する叱り方ができる本 中嶋郁雄 (著)