ケンカ|2023年8月

子どもたちが数人集まれば、大なり小なりケンカが始まります。保育園の中でも子ども同士のケンカは良く目にします。園児たちのケンカの原因はおもちゃの取り合いや順番やルールを守らない、といったことが多いでしょうか。子どもたちはお友達や兄弟とのケンカを通して、世の中には自分の思い通りに行かないこと、時には我慢して自分の気持ちに折り合いをつけることを学び、社会性を少しずつ身に付けて成長していきます。いわばケンカは子どもにとって心が育つための栄養のようなものです。ご家庭でも頭ごなしに「ケンカはダメ」と叱らず、成長の良い機会と思って見守ってあげる姿勢も大切です。相手に暴力を振るうことはやってはいけないことですが、多少のことであれば受ける側も加える側もその加減を知るうえで貴重な体験となります。しかし感情のコントロールが未熟な子どもたちのケンカは、大きなけがや事故にもつながりかねません。状況がエスカレートする場合は『絶対にやってはいけない事』を、大人はその場でしっかり教えなければいけません。

さて、話は変わって今度は夫婦ゲンカの話です。子どもが生まれるまではほとんどケンカなんてしなかったのに、子どもが生まれてからは些細なことで言い争いが絶えなくなった、なんていうご家庭もあるかもしれません。ご多分に漏れず私もその一人でして、子育ての方針から始まり、家事やお金の事に至るまで、ケンカのネタは日々泉のごとく湧きあふれ尽きることがありませんでした。そんなわけで年がら年中子どもたちの前で夫婦ケンカを繰り広げていたのですが、子どもたちにとって親のケンカはどのように映っているのでしょうか。例えるならば狭い電車や飛行機の中で誰かが怒鳴り声をあげたとします。辺りは一瞬にして緊迫した空気が流れ、不安から誰もがその場から逃げ出したい気持ちにかられることでしょう。今更我が子たちにこのような状況を作ってしまったことを後悔してみても、起きてしまった過去を変えることは出来ません。私が今感じていることは、両親の関係は子どもの将来のパートナーとの関係や家庭観に少なからずとも影響を与える、ということです。夫婦の間で我慢するようなことがあっては良くありませんが、万が一ケンカになりそうな空気が流れたなら、子どもの将来を思い、その場はぐっと堪え、子どものいない場所、いない時間を選んで存分に戦ってください。

最後は大人のケンカの話です。職場での人間関係は転職理由の常にトップに位置するのではないでしょうか。職場での人間関係が良好であれば、その仕事自体に多少の不満があっても何とか乗り切れますが、ひとたび人間関係が崩れてしまえば仕事を続けていくのも困難になってしまうほど人間関係とは重要なものです。大人になってからの揉め事は残念ながら子どものそれとは大きく違い、一晩寝たら翌日にはケロッと忘れて仲直りできるようなことはほぼありません。つい先日も身近で似たようなことが起こり、子どもたちが将来世の中に出て周囲とうまく生きていくためには、勉強よりも何よりも、良好な人間関係を築けるか否かが最も重要なカギではないか?と改めて感じています。

仲良きことは素晴らしきことではありますが、子どものうちにケンカをたくさんすることも、将来相手の立場に立って物事を考えられる大人になるためには必要なことではないでしょうか。